口腔粘膜疾患

口腔粘膜疾患とは


口腔粘膜疾患とは、口の中の粘膜(舌、歯肉、口蓋、頬など)に発生する様々な病気や症状の総称です。これには、粘膜の変色、水疱、びらん、潰瘍、腫瘤、痛みなどが含まれます。原因は、物理的・化学的刺激、感染症、アレルギー、全身疾患など多岐にわたります。

口腔粘膜疾患の例


当院の訪問診療について、よくある質問をまとめてみました。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

皮膚や粘膜にできる角化性で炎症をともなう難治性の病変です。口腔では頬粘膜に多く認めますが、舌や口唇にも生じます。白い粘膜の角化がレース状にみられ、周囲に発赤を伴うのが特徴です。しばしば、びらんや潰瘍を形成し、接触痛を認めたり、食物がしみたりします。まれにがん化することもあります。

アレルギー、とくに歯科用金属によるものや遺伝的素因、自己免疫疾患、ストレスなどの精神的因子、さらに代謝障害などの関与が考えられていますが、正確な原因は不明です。

局所的には、うがい薬や副腎皮質ステロイド薬を含む軟膏を使います。歯科用金属によるアレルギーが疑われる場合は、原因と思われる充填物や補綴物を除去する必要があります。これらを除去する前に、歯科用の金属アレルギー検査を行います。 


白板症(はくばんしょう)

口腔粘膜、とくに頬粘膜や舌、ときには歯肉にみられる白い病変で、こすっても剥離しないものをいいます。白板症は比較的頻度も高く、とくに舌にできたものは悪性化する可能性が高いため、「前がん病変」の代表的なものとされています。

喫煙やアルコールによる刺激、義歯などによる慢性の機械的刺激、ビタミンAやBの不足、さらに加齢や体質なども関係するといわれています。禁煙により治癒することもあります。しこりや潰瘍をともなうものは初期がんが疑われるため、必ず組織をとって検査する必要があります。白い部分が厚いもの、隆起したもの、びらんや潰瘍を伴うものは悪性化する可能性が高いので、切除します。長年かかって悪性化する場合もあり、長期にわたる経過観察が必要です。


口腔カンジダ症

カンジダ・アルビカンスという真菌(かび)によっておこる口腔感染症です。急性型と慢性型があります。口腔粘膜の痛みや味覚障害が出ることもあります。急性型である偽膜性カンジダ症は灰白色あるいは乳白色の点状、線状、あるいは斑紋状の白苔が粘膜表面に付着しています。この白苔をガーゼなどでぬぐうと剥離可能ですが、剥離後の粘膜面は発赤やびらんを呈しています。病変が慢性に経過した肥厚性カンジダ症では、白苔は剥離しにくく、上皮の肥厚を伴うようになります。

カンジダ菌は口腔内の常在菌の一種で、普段はある程度以上は菌数が増えないように他の菌と共存しています。しかし、ステロイド薬の投与や糖尿病、全身衰弱などによって免疫力が低下している状態、唾液量の減少、長期間にわたる抗菌薬の服用などにより、常在菌間のバランスが崩れ、カンジダ菌が異常に増殖し、病原性を発揮することにより発症します。

治療には、口腔内の清掃、抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬を使用しますが、時に抗真菌薬の内服を必要とすることもあります。


再発性アフタ

アフタは直径数ミリ大の円形の浅い潰瘍で、潰瘍の表面は灰白色~黄白色の偽膜で覆われ、潰瘍の周囲は赤くなっています。食物や歯ブラシなどがちょっと触れただけもズキッとした強い痛みを覚えます。また刺激性の食物や熱いもの、塩辛いものがしみたりします。アフタは何もしなくても1~2週間で治ります。アフタが再発を繰り返す場合に再発性アフタといいます。 

原因は不明です。機械的刺激、遺伝性、極端な疲労、ストレス、あるいは片寄った栄養摂取などいろいろな要素が絡み合って発症するといわれます。

副腎皮質ステロイド薬入り軟膏や口腔粘膜貼付錠、うがい薬を投与しますが、時に内服薬を用います。